「むかしの街に来て」

 

昔住んだことのある

町に来た

 

そこには見覚えのある家々が建ち

公園があった

街路樹はこの十年の間に成長し

その頃新しかったビルは

すすけて見えた

 

夜  昔知り合った

友人と酒を飲み

子供のことなど話しているうちに

同時に進行している

歳の重みを

相手の白髪に認めた

 

翌朝ホテルから抜け出し

かつてよく

自転車で走り抜けた道を眺めると

大樹が空を隠し

挟みこむように覆われた道は

後戻りの出来ない

『時』を包みこむ

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