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幸田比呂    ―詩と絵―  

「ティランジア」より

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目次


1.「ティランジア:エアープラント」


2.「ポントチャトレイン大橋」


3.「沼杉」


4.「巨大な星条旗」


5.「ドゥメイン通り」


6.「ポリースマン」


7.「ジャズの町」


8.「家族の団らん」


9.「バーボン街の伝統」


10.「教会通りを守れ」


11.「ナッチェスへの道」


12.「ビックスバーグ」


13.「ジャズフェステバル」





「ティランジア:エアープラント」


この植物には 珍しく根がない


多年生なのに葉緑素もない


宿主(やどぬし)の葉にかこまれ湿気をもらう


共生する菌に頼って ゆっくり成長しつづける


アメリカ南部に繁る 木々の枝にぶら下がり


この時期には 花もみられず ひっそり生きる








「ポントチャトレイン大橋」



巨大湖 ポントチャトレイン


災害に見舞われた町 ニューオーリンズ


カテリナは湖の水を ひっくり返し


町を洗い流した 湖にかかった


世界で最も長い道路には


今も数えきれない車が出たり入ったり


渡りはじめるとき 出口は見えない







「沼杉」



水面の上につきだす肘(ひじ)


それは新大陸の南部に育つ巨大な木の根


湿原はあらゆる植物を 水の中に沈める


彼らは厳しい環境に耐えぬく


そんな本当の自然を見るために


ここまで来た








「巨大な星条旗」



ルイジアナのキャンパス


メモリアルタワーがそびえる 巨大な星条旗がたなびき


樫の巨木たちは その守衛のようだ


学園は平和だが 強烈な太陽がのぼると


学生たちは 巨木の陰に避難する


残されたものは 記念塔と 巨大な国旗だけ







「ドゥメイン通り」



このさびしげな停留所を 数えきれない人々が


素通りする電車はなかなかこない 


そばを流れるのは巨大なミシシイピー


「ドゥメイン駅」という名の看板だけが


世界中の訪問者を


歓迎する







「ポリースマン」



巡回する警察官 何かを探すようだが


ここには平和以外何もない


静寂を求め 音楽と食事を楽しみに


やって来る人々


悠々と歩くポリースマンは 散歩しているようにも見え


平和な町の象徴だ







「ジャズの町」



ニューオーリーンズ


「ここでは自由だ」と


何かを 感じさせる


音楽に自由  ジャズは


この町の紺碧の空高く


私たちを解放し


飛翔させる







「家族の団らん」



樫(かし)の木陰で 家族が語り合う


フリーな時が流れ


会話に邪魔するものはない


家族の語らいは 心と心の交流


樫の樹の下ですごす


この時間は


神様の贈り物







「バーボン街の伝統」



暗闇が迫るころ 街にはあの音が


酒場のざわめきを聞いて


そぞろ歩く心に響くあの音色を求め


仕事に疲れ 病に侵され


悩み心を抱えても


バーボン街に あふれる人たちがいる







「教会通りを守れ」



ハイウエー61が走る ミッシッシピー州の小さな町


抗議のプラカードが掲げられる


―教会通りを守れー


美しい樫の木が この街におい繁る


これが「教会道り」だ


車をスローダウンし 未来に受け継ぐべき


遺産のうつくしさ







「ナッチェスへの道」



自由への道 誰もいない世界への道


まっすぐな天への道は ナッチェスへ過去から


自由の奪還 道はこの街へ


ナッチェスから 自由への道が


全ての人にひとしく


与えられように







「ビックスバーグ」



この小さな町で 独立戦争が終わった


アメリカ歴史のシンボル 


ここには 数えきれない記憶が残る


今なぜか カジノホテルが建つ


いたるところにある教会は


変わりなく


人々を歓迎する







「ジャズフェステバル」



ゴスペル、ブルース そして 伝統のジャズ


大きなテントで繰り広げられる ニューオーリンズ名物 ジャズの祭典


数千もの人々が世界中から訪れる


野外ステージでは いくつかの演奏を同時に楽しみ


耳を裂くようなサウンドと名物料理


持参の折り畳みいすに腰掛けたり 踊ったり 


この時よ 永遠にあれ!


                   



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