それは突然の出来事のように私を驚かせた。

もう何年も登ってきた坂の上から目に飛び込む

左手の土塀の向こう

黄色の木の葉の群れが散った後に

銀杏は赤い実を

数珠玉のようにぶらさげて立っていた。

冬の寒空の中

こんな見事な贈り物があったとは

なぜ今まで気がつかなかったのだろうか

ただひたすら坂を上がることを考え

天空に目を配ることのない自分が

そこに在った

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