一幕見
夜 何時(なんどき)でもいい
階段をかけ登れば
そこに
新たな世界がある
歌舞伎という
伝統の光が
4階の席からも
明るく見渡せる
たった2列の席ではあるが
巻寿司をほおばり
ジュースをのみながら
下の出し物に目を凝らす
ここはイヤホンガイドも
仕出し弁当もないので
よほどの通か
はたまた初めての人しか
来ないのだ
通い慣れる人ならば
双眼鏡を片手に
ネクタイをゆるめ
真剣な面(おも)もちになる
この三百年の歴史が生んだ
世界に誘い込まれ
言葉は知らずとも
きらびやかなる出し物に
心を奪われ
時がすぎる