幸田比呂詩集
「ユーカリの樹」から
―目次―
1.[サンゴ礁へ]
2.[熱帯林から]
3.[見つめるヤシ]
4.[ユーカリの樹]
5.[海に消える]
[サンゴ礁へ]
ケアンズの港に
いくつもの船が浮かぶ
大サンゴ礁への旅が
今始まる
人々は
世界中からやってくる
地球の誕生
生命のはじめから
自然遺産はあった
人々は何故
ここへ来るのか?
そのこたえは
サンゴ礁の底から
返ってくる
[熱帯林から]
何千もの生物種
その命を支える
深いジャングルの奥から
創世の意味を探る
熱帯雨林の中に
這うように茂る
蔦(つた)や
トナカイ角のようなシダ
自然バランスの象徴
枯れ葉は蟻や微生物の
エネルギー源
永遠の生命が
熱帯ジャングルに
潜む
[見つめるヤシ]
真冬の曇り空のもと
海原を見れば
砂浜にヤシの木がそびえる
朝から夕べまで
浜辺を歩く人々を
見つめている
平和な空から
少し冷えた風が
吹きそそぎ
数え切れないほどの
思い出にふける
人々の心を
この木はお見通しだ
[ユーカリの樹]
海辺にもう
何十年も生きている
あたかもこの浜辺の
主人であるように
ユウカリの巨木は立っている
コアラだけが命をつなぎ
何万年も世代を重ねる
ほんの数種のユウカリだけが
コアラの餌
命のバランスが
彼らを支え
永遠という
言葉が生きる
[海に消える]
命は
この海で生まれた
我が家
命が始まり
生き物は
どう継承されたのか
巨大な海で
数え切れない生命が
生きている
地球のすべては
海にそそぎこみ
ここが終着点
思い出は
砂の上の
フットプリントのように
波音とともに
海に消える