「観音崎」

 

六月の風は潮の香りを乗せ

観音崎の磯辺に吹き寄せる

 

沖にはエンジンを響かせた

小舟が通り忙しい

ゆっくりした貨物船は

時を忘れたように

雲の中に消える

波はあくまでも静かに

この半島の岩にぶつかり

しぶきも今日は少ない

白い灯台は森に囲まれ

昔のまま立っている

 

子供らは引き潮で取り残された

生き物たちを拾い

逃まどう ふな虫の群れに

驚きの声を上げる

 

老人が一人

岩に腰掛け 握り飯をほおばり

すわれるような

遠くの波に心を奪われる

目次  TOP