「羽黒の宿」
黒々した雲が
西の空から動きだし
杉の木立に影を作る
光は次第に
動く雲に遮られ
日本海の彼方に
消えて行ったのか
この宿坊の
畳の上に寝ころんで
窓の外に動く雲を眺めると
夕刻に紅の光すらなく
どんよりと不気味に
杉の大木を暗闇のなかに誘う
もうここは山も閉じ
人は下り
ただ雲と風のなかに覆われていく
雪解けの春まで
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